店舗現場から創る採用ブランド ~ローカル採用における5つのステップ~

 執筆: Sync Up  更新 2020/07/13 18:37:58

「あそこの店は本部がCMをバンバン打っていて、いいなあ」「あの店は時給を高く設定出来ていいなあ」より多くの応募者を獲得する為に、どのお店もあの手この手と様々な施策を取り入れています。

 

求職者にわかりやすい“TVCM”や“高時給”でアピールしている競合店を見て、羨ましい気持ちになった方も少なくないのではないでしょうか。特にTVCMを打っている企業・ブランドは認知が広まりやすい為、この行為自体を「ブランディング」と捉えてしまっている方もいらっしゃると思います。

 

しかし、ブランドとは「店舗のいで立ちやスタッフの振る舞い、商品やサービスの在り方から染み出てくるもの」なのです。

 

 

採用ブランドを店舗現場から創り出し、ローカル採用力を強化できる5つのステップについて、
株式会社パーソル総合研究所 フィールドHRラボの責任者を務める日比谷勉さんに伺いました。

 

 

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日比谷 勉
吉野 裕子

 

 

「ブランディング」 と 「マーケティング」 の違い


 

 --- 採用ブランディングについては、私も前まで広告をたくさん打つことだと思っていましたが、広告を打つことはマーケティングと呼ぶべきなのでしょうか。

 

 

厳密にいうとちょっと違います。TVCMがブランディングなのか、マーケティングなのかという発想ではなく、それがどのような目的で放映されるかによるからです。

マーケティングとブランディングの違いについては様々な解釈が存在しますが、一番理解しやすいのは、以下の絵です。

 

マーケティングとブランディングの違い

出展元: https://blog.btrax.com/jp/marketingvsbranding/

 

マーケティングは、自分にどのようなイメージを持って欲しいか、自分から相手に具体的に伝えること、ブランディングは、自分に対して持って欲しいイメージを、相手が持ってくれるように努力すること、です。



例えばiPadやiPhone等を販売しているApple社について、吉野さんはどのような印象を持っていますか?

 

 

 --- Apple社の商品は大好きです!デザインが洗練されていて、シンプルだけど、どこかオシャレですよね。

 

では、さらに質問です。
吉野さんがそのような印象を持ったのは、Apple社の広告を見たからですか?それとも商品などから感じとったものですか?

 

 

 --- 広告ではなく、デザインや操作性に感動した、という理由のほうが強いです。TVCMも良く目にしますが、ほとんど音楽と映像だけで成り立っていて、文字で表現されている情報はせいぜい機種名や、新しく追加された機能くらいですよね?なのでやはりCMの影響は少ないと思います。

 

 

ありがとうございます。これがまさにApple社のブランドです。スティーブ・ジョブズがデザインに関して一切の妥協を許さない頑固な経営者だったことはよく知られているように、Apple社は商品を通して自分達の価値(=デザインや操作性etc.)を発信しており、決してTVCMに頼っていません。



逆に、もしApple社の商品が奇抜な色のデザインだったり、使いづらい仕組みだった場合、いくら会社がTVCMで「うちの商品は抜群にクールだよ!」と大量放映しても、消費者に「Apple社=クール」という印象は持たれないのです。

 

 

 --- 確かにそうかもしれません。自分が使ってみてイマイチと感じた商品やサービスのTVCMを見ても、後から心動かされることはないですね。

 

 

そうですね。覚えて頂きたいのは、ブランドは決してTVCMの影響で作られるものではなく、
商品・サービスそのものから染み出るものだ、ということです。


ブランディングは、“人の印象を左右する、すべての要素”で自分たちの価値を表現する努力のことなのです。

 

例えば自分のお店を、繁盛する高級料理店にしたい!と思うのであれば、


 ・店舗立地は大通り沿いより、小道を入った静かな通りに構え、ゆっくり話せる“雰囲気”を出す
 ・料理は大きなお皿にちょこんと乗せる形にして、1つ1つに手が込んでいる“雰囲気”を出す
 ・スタッフにはピンとアイロンのかかった制服で丁寧なサービスを徹底させ、お客様を大切にもてなす“雰囲気”を出す

 

ことが必要になってくると思うのですが、

 


この“雰囲気”=イメージ・印象を持ってもらうための努力そのものがブランディングです

 

 

 

ローカル採用の5ステップ


 

 --- 店舗作りの努力そのものもブランディングと呼ぶというのは、驚きでした。
一方で、これならば採用ブランディングは、店舗現場から創れる。いや、むしろ、日常の店舗運営のそのものがブランディングになっていた・・・ってことなのかなと感じました。

 

 

その通り。自分では無意識でも、お店の印象・イメージを発信していることはあるんです。
ローカル採用として、私たちが推奨しているのは以下の5つのステップです。

 

基本_5つの採用ステップ

 

 

 --- 第2段階の知人・友人紹介は、よく聞く話ですが、第1段階ってそもそも採用活動なのでしょうか?

 

もちろん。大事なファーストステップです!
2017年にパーソル×中原研究で行った調査によると、求職者の約43%は事前にお店やサービスを利用しているというデータがあります。3人に1人~2人くらいと考えると、多い印象を受けます。
出典:https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201802020903.html

 

 

何が言いたいかというと、「普段から清潔で、笑顔の溢れるお店」であることが回りまわって、求人募集という局面でも求められるということです。

 

 

 

 --- 確かに、私自身あまり雰囲気の良くないお店に入った時に「ここでは働きたくないな」と思うことがあります。

 

ありますよね、そういうこと。
5つの採用ステップについて、一つ一つ説明していきますね。

 

 

職場内でのアプローチ

 

【ステップ1】職場イメージの向上
ここでは、職場全体でサービス向上することでイメージ向上を目指します。例えば、職場内を清潔に保ち、提供する商品・サービスの品質を上げるための努力をすることです。

一見当たり前に思えますが、徹底出来ているお店は多くないものです。

働きたい・働き続けたいと思うような楽しい職場でなければ、いくら採用しても従業員は増えません。また、そう思わせるような雰囲気がなければ応募者はやって来ません。

 

【ステップ2】従業員からの紹介
これはイメージしやすいですね。既存従業員の知人・友人・家族を紹介してもらうことです。
“友人紹介制度“として報酬が発生する制度を設けている企業も多いですが、できれば心から「この素敵な職場を身近な人にも知ってもらいたい」と思ってもらえるような環境作りができるといいですね。

 

【ステップ3】顧客へのアプローチ
お店の場合がわかりやすいですが、お客様として来店される方は、①ご近所さんの可能性が高い ②商品・サービスに魅力を感じてくれている 為、一緒に働く従業員候補として最適です。

 

 

職場外でのアプローチ

 

【ステップ4】地域コミュニティとの連携
ここでは商店街の掲示板へのポスター掲示などの直接的な求人活動と町内会やスポーツチームなどと良好な関係を気づくことで間接的に求人に繋がる影響にも言及しています。

 


【ステップ5】求人メディアへの掲載
採用ステップの最後が求人媒体への掲載です。1~4すべてやりきり、それでも人が足りない!という時に求人広告が必要となります。

 

 

 

 --- 職場内のアプローチだけでもこれだけやれることがあるんですね!今までは採用ステップというと、ステップ5から逆のものをイメージしていたので、求人媒体への掲載が最後に来ているという点も驚きました。

残念ながら多くの企業様は、これと逆の順番で予算投下しているので、とてももったいない気持ちになります。


緊急ニーズがある場合は、情報を一気に拡散できる求人媒体にお願いするのが良いと思うのですが、求人媒体ばかりに頼りすぎると、下のような慢性的な人不足サイクルに陥る可能性もあるため、注意が必要です。

 

媒体サイクル

 

 

 --- このサイクル、心当たりありすぎます…職場環境が整っていないまま、広告の力で人を採用するので定着しないんですよね。そして求人媒体営業との打ち合わせ、投下費用が増えていって、人不足の原因分析の為の時間が割けないという。

 

まさに。とはいえ急にガラっと変えることは難しく、非現実的だと思います。
※まずは、次にお話する日本マクドナルドの求職者ジャーニーを1つのゴールイメージとして捉えて頂けるとよいと思います。

 

【事例紹介】日本マクドナルドの採用活動事例


 

 

綿密に設計された求職者ジャーニー

公式HPにも記載がありますが、日本マクドナルドはお客様が子供であっても彼らとの関係性構築を重視しており、

彼らがいつ・どこで「働こう」となった場合でもマクドナルドが第一想起となるように「求職者ジャーニー」を組み立てています。


求職者ジャーニーは、私が作った造語で、マーケティング用語のカスタマージャーニーのように、求職者がお店の商品やサービスを知ってから、最終的にそこで従業員になるまでの思考・感情・行動などのプロセスを表現しています。
出展:「カスタマージャーニーとは?」


全部を説明するとかなりボリューミーになってしまうので、1つだけピックアップします。
例えば幼児・小学生へのサービス提供1つ取っても、


①「マクドナルドって楽しい!」と子供に思ってもらう

②「マクドナルドは身近」だとその親に思ってもらう

 

という2つの効果があり、②のように思ってくださった親御さん達が応募者となることがよくあります。



また、これには上記で説明した5つの採用ステップの内、


 ・ステップ1:職場イメージの向上 ← そもそも綺麗で接客が良いお店でなければ来てもらえない
 ・ステップ3:顧客へのアプローチ ← 店頭でポスター掲示やチラシ配布をしなければスタッフ募集中か認知してもらえない
 ・ステップ4:地域コミュニティとの連携 ← プライベートでの来店以外でも接触機会を創出する


の3つが複雑に影響しあって、成り立っており、非常に長期的な視点で、綿密に練られた求職者ジャーニーと言えます。

 

step

小学生向け

 

出展:https://www.mcdonalds.co.jp/scale_for_good/our_communities/mc_discovery/

 

まとめ:店舗現場から創る採用ブランド ~ローカル採用における5つのステップ~


 

いかがでしたでしょうか?今回は店舗現場から採用ブランドを創るための5つの採用ステップをご説明しました。


【ステップ1】 職場イメージの向上

【ステップ2】 従業員からの紹介

【ステップ3】 顧客へのアプローチ

【ステップ4】 地域コミュニティとの連携

【ステップ5】 求人メディアへの掲載



事例として取り上げたような活動を、店長独自で行うことは難易度が高いかもしれませんが、
次回は、この5ステップに則った具体的な採用活動の一部をご紹介していきます!

 

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