労務リスク対策チェックリスト!バイトとのトラブル回避方法とは?

 執筆: Sync Up  更新 2023/06/09 17:37:22

この記事では、アルバイト・パートのスタッフを活用する上で気をつけたい労務リスクのポイント4選について紹介しています。

労務リスクを軽視してトラブルになってしまうと思わぬ損害が発生してしまう可能性がありますので、特におさえておきたいポイントを紹介していますのでしっかり理解して管理する様にしましょう。

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労務管理セット (3)

 

 この記事を読んでわかること
  • 労務トラブルの原因となる4つポイント
  • 労務リスクを管理する上で重要なこと
  • 労務リスク対策チェックリスト

 

 

目次

労務リスクとは

労務リスクとは雇用や労働時間、賃金など企業と労働者の間での労働に関するトラブルが発生するリスクのことで、無期雇用のみならず有期雇用のアルバイト・パートスタッフとの間でも労務リスクは存在します。
まずは、どの様な労務リスクが存在し、どの様なペナルティが発生しするのかをみてみましょう。

労働基準法(違反)

労働基準法は労働三法の1つで1947年に制定された労働時間や休暇などについての基準を定めた法律で以下の12の項目からなっております。
労働基準法は企業が労働者を雇用する中で遵守すべき基準であり、労働契約の最低基準ですので労働基準法を下回る条件で労働者を雇用することはできません。
  1. 労働条件の明示(労基法第15条)

  2. 解雇の予告(労基法20条)

  3. 賃金支払いの4原則(労基法24条)

  4. 労働時間の原則(労基法32条)

  5. 休憩(労基法34条)

  6. 休日(労基法35条)

  7. 時間外および休日の労働(労基法36条)

  8. 時間外、休日および深夜労働の割増賃金(労基法37条)

  9. 年次有給休暇(労基法39条)

  10. 就業規則(労基法89条)

  11. 制裁規定の制限(労基法91条)

  12. 周知義務(労基法106条)

労働基準法は時代の変化に合わせ改正が行われており、近年では2018年に成立し2019年に施行された「働き方改革関連法」に合わせ時間外労働の上限を厳格化や有給休暇取得の義務化などが盛り込まれております。
そのため最新の内容をきちんと理解しておかないと思わぬところで違反してしまう可能性もあります。
実際厚生労働省から公表されているだけで、令和3年6月1日から令和4年5月31日の一年間にも労働条件の明示漏れや割増賃金の払漏れなど30件以上の労働基準法違反が発生しております。

なお、労働基準法違反には労働基準法にて以下の様に罰則が規定されております。

  • 第117条:1年以上10年以下の懲役、または20万円以上300万円以下の罰金

  • 第118条:1年以下の懲役、または50万円以下の罰金

  • 第119条:6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金

  • 第120条:30万円以下の罰金

このように労働基準法を違反した場合罰則があるだけでなく、場合によっては厚生労働省より社名及び所在地が公表され、
それを元にいわゆるブラック企業としてインターネット上で公開されてしまうなど企業のレピュテーションに大きな損害を与えてしまう可能性もあります。

法定労働時間

法定労働時間は労働基準法で定められている労働時間で、

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

と定められております。

ここで注意しなくてはいけないのが所定労働時間と法定労働時間の違いになります。
所定労働時間は労働契約の中で決められた労働時間のことで、労働者と雇用者との契約の中で決定されるものになります。

ですので、労働契約において所定労働時間が1日8時間、週40時間を超えるとしていたとしても、
原則として1日8時間、週40時間以上の労働を労働者に行わせることは労働基準法違反になります。

もし、法定労働時間以上の労働を行う場合は「36協定」と言われる労使協定を結ぶ必要があり、法定労働時間を超えた労働時間に対しては割り増し賃金を支払う必要があります。

なお従業員の人数に関わらず法定労働時間を超える労働を行う場合「36協定」の締結と届出は必須となります。
「36協定」の未締結での長時間労働は労務トラブルとして発生頻度の高いものの一つですので注意しましょう。

また、アルバイト・パートの場合、複数のアルバイトを掛け持ちをしていることもありますが、
その場合掛け持ちしているアルバイトも合計して法定労働時間を超えない様にする必要があります。
法定労働時間を超えてしまう場合は後から雇ったアルバイト先が36協定を締結している必要があります。
さらに時間外労働の割増賃金についても後から雇った側が支払う必要がありますので、もし掛け持ちで働きたいというスタッフがいた場合は、兼業先も含めて労働時間を管理する必要があります。

連勤

労働基準法では企業は労働者に対して、

使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

と少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えることを義務としており、それらの休日を法定休日と言います。

週休休日制を取る企業で就業規則に法定休日を定めていない場合「暦週の後に来る休日を法定休日」とされますが、あくまでも見解であり12連勤までであれば適法となります。
また4週間を通じて4日以上の休日という変形休日制の場合は就業規則等で定められた起算日から4週間となるので48連勤が最大ということになります。
36協定を締結していれば割増賃金を支払うことで月45時間、年360時間まで時間外・休日労働が可能ですので理論上は365連勤であっても可能ではあります。
ただし、無闇な連勤は労働者の心身に悪影響を及ぼす可能性もありますので、適宜休日が取れる様調整することが望ましいでしょう。

なお休日とは、労働契約において労働義務がないとされている日をいい、原則として暦日、すなわち午前0時から午後12時までの24時間をいいます。
例外として夜間から朝までのシフトを組んでいる場合などは、24時間の間を空けることで休日とみなします。

シフトカット

新型コロナウィルスの感染拡大により増えている労務トラブルの一つがシフトカットにまつわるものになります。

シフトカットとは一般的には会社の都合でアルバイト・パートのシフトの日数や勤務時間を削ることを指します。
一旦は提出されたシフトを承認したにも関わらず事前の協議なく客足の低減などで営業日を減らすためシフトも減らすなどは会社の都合でのシフトカットにあたる可能性があります。
また実際に営業してみたものの客足が少なく営業時間を短縮したり稼働時間を短縮したと言った場合も同様です。

上記の様に一度承認したシフトを変更するほかに労働契約にて定められた日数を大幅に下回るシフト日数しか入れられない場合もシフトカットと判断されます。
これらのシフトカット自体は業務上の指揮命令権限における自宅待機ととることができるので即違法というわけではありません。
しかし、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたるため、企業は労働者に対して平均賃金の60%に相当する休業手当を支払う必要があります。

なお、平均賃金は労働基準法第12条にて、

算定時点の前3か月間に支給された賃金の総額 ÷ 当該期間の総日数

と定められております。ただし労働日数が総日数を下回る場合、平均賃金が小さくなってしまう可能性があるため、

算定時点の前3か月間に支給された賃金の総額 ÷ 当該期間の労働日数 * 60/100

という最低補償額が設けられており、アルバイト・パートのスタッフの場合最低補償額が基準になることが多いでしょう。

ただし、過去には民法536条に基づき100%の支払いを命じられた判例(東京地裁2020年(令和2年)11月25日判決)などもありますので、きちんと状況を説明し、必要な手当てを支払うことでアルバイト・パートのスタッフとの関係を悪化させない様にすることが重要です。

シフト勤務制

アルバイト・パートのスタッフを活用する中ではシフト勤務体制をとっている企業も多いて思いますがこちらについても注意が必要です。

シフト勤務に関しては労働基準法上では定義されてはいません。
24時間営業している業態などにおいて勤務時間を2つまたは3つに分割し人員を交代させて勤務する体制になり、法定労働時間・法定休日の範囲内であれば所定労働時間として労働契約の中で労働者と企業でコントロールする形になります。

逆に言うとシフト勤務においては36協定の締結がない場合、法定労働時間を超えて労働させることはできませんし、36協定の締結がある場合においても法定労働時間以上の労働に対しては割増賃金を支払う必要があります。

シフト勤務と似ていて混同しやすいものの中に変形労働時間制があります。

変形労働時間制は1ヶ月間、1年間(規模30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業のみ1週間も可能)のいずれかで期間を区切った中で「一週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲」で特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

いわゆる繁忙期・閑散期のある業界・職種ではこの変形労働時間制を活用することで残業代などの人件費をコントロールすることができます。
変形労働時間制の適用においては労働者と労使協定を締結した上で労働基準監督署への届出が必要になります。

なお変形労働時間制とシフト勤務を組み合わせて活用することも可能です。

労務リスクマネジメントの重要性

先に述べた通り労務リスクの中でも労働基準法違反に当たるものには労働基準法にて重いもので懲役10年以下または300万円以下の罰金という罰則が規定されております。

また法律上の罰則以外でも、例えばインターネットやSNSでの悪評などによる炎上など労務トラブルが原因で想定している以上に大きな損害が発生してしまうこともあります。

些細な労務リスクであろうとも軽視せずにしっかりと対応すること未然に防ぐことができます。

労務リスク対策チェックリスト

以上の様に労務リスクにはさまざまなものがありますが、知らなかった・忘れていたでは済まない様なトラブルに発展することもあります。

最後に労務リスクを避けるためのチェックリスト紹介していきます、全てにチェックがつかない様であれば改めて状況を見直し適宜修正する様にしましょう。

労働基準法に関するチェック

1. 労働条件の通知を書面などにてしっかりと行なっている Yes No
2. アルバイト・パートのスタッフでも、雇用期間が半年を超えていて、所定労働日数の8割以上働いている場合、有給を付与している Yes No

法定労働時間に関するチェック

1. アルバイト・パートの労働時間は1日8時間、週40時間を下回っている Yes No
2.掛け持ちバイトなどもきちんと把握し、労働時間の合計が法定労働時間を下回っていることを確認している Yes No
3. 法定労働時間を上回る残業が発生する可能性がある場合、36協定を締結している Yes No
4. 法定労働時間を上回った残業の際には割増賃金を支払っている Yes No

連勤に関するチェック

1. 6時間以上の労働に対しては必ず休憩時間を挟む様にしている Yes No
2. 週休休日の場合、最低でも週に1日の休日を与えている Yes No
3. 4週間にわたって勤務する場合4日間の休日を与えている Yes No
4. 休日は24時間以上勤務がない日としている Yes No

シフトカットに関するチェック

1. 勤務予定の直前にシフトの削除や時間変更を行なっていない Yes No
2. 労働条件を大幅に下回るシフトを設定していない Yes No
3. やむを得ずシフトを削る場合、事前に協議し必要に応じて休業手当を支払っている Yes No

シフト勤務制に関するチェック

1. 日を跨いでのシフトであっても法定労働時間を下回っている Yes No
2. 深夜のシフトについては割り増し賃金を支払っている Yes No

労務管理セット (3)

まとめ:労務リスクのマネジメントはしっかりと!

雇用契約を結んでいる中で全てのトラブルを未然に防ぐことは難しいかもしれません、ですが多くの労務リスクはきちんと対策を講じることでトラブルに発展する可能性を抑えることは可能です。

労働基準法にきちんと準拠した労働条件に基づいて労働契約を結ぶだけでなく、それらをきちんと履行しているか確認することで労務リスクを減らしアルバイト・パートのスタッフも気持ちよく働くことができる環境を作りましょう

 

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