働き方改革は無関係じゃない! アルバイトの労務管理のポイント

 執筆: Sync Up  更新 2023/06/09 17:44:09

アルバイト・パートスタッフは働く内容にも厳密な定義はなく、労働者としての権利は正社員と同じであることから、企業はアルバイト・パートの労務管理にもきめ細やかで適切な対応が必要となっています。

アルバイト・パートスタッフは、平成20年に改正された『パートタイム労働法』からは「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と表記され表現されているように、法律上は両者の名称による区別は「ない」といえます。業種や職種、業務内容によっては正社員と同じような仕事をする場合も少なくはなく、期間も長期に及ぶケースもあります。

 

今回は「労務管理のポイント」をご紹介できればと思います!

 

シフト管理のトラブル防止

 

 

そもそも労務管理とは?


 

  労務管理とは、労働条件や労働環境に関する事務手続き全般を指し、それらを管理することをいいます。労働時間や賃金の管理、社会保障への加入や就業規則の作成から周知など、労働基準法や企業独自のルールに基づき業務を行います。

 

厚生労働省が公表した「平成30年度地方労働行政運営方針」の際には、雇用環境・均等担当部署と労働基準担当部署が掲げる重点施策それぞれに 「労働条件の確保」が盛り込まれた内容になっていたりと、企業における労務管理への取組みは重要だと捉えられています。

就業時間が決まっている固定制勤務の職場とは異なり、業種によってはシフト制勤務の職場となり一人ひとりの始業や終業時間が異なるケースも数多く存在します。

 

 

具体的な労務管理の内容

 それでは一般的な労務管理の担う役割はどのようなものがあるのでしょうか?


労務管理の具体的な役割として「1. 労働者の労働時間管理」「2. 各種手当や賃金管理」「3. 公的な手続きの実施・管理」「4. 労働上の安全衛生および健康管理」「5. 労務トラブル対応」「6. 就業規則策定と周知」が挙げられます。


1. 労働者の労働時間管理

労働時間、勤怠、休日などを管理します。このほか、有給休暇の管理もあります。パート・アルバイトの従業員で、週の所定労働時間が30時間未満の場合でも勤務日数や勤続年数に応じて有給休暇を付与することが義務付けられています。

 

2. 各種手当や賃金管理

給与計算や各種手当、控除などを管理します。

 

3. 公的な手続きの実施・管理

雇用保険、年金、健康保険への加入や費用を管理します。

 

4. 労働上の安全衛生および健康管理

業務や職場でのケガや病気などの労働災害を防ぎ、安全で衛生的、健全な職場づくりを担います。

 

5. 労務トラブル対応

職場でのハラスメント、従業員の就業規則違反など労働に関するトラブルに対応します。

 

6. 就業規則策定と周知

労務管理者は管理職・労働者に対して就業規則を周知する役割を担います。シフト制勤務の職場では、さまざまな時間帯のシフトパターンが用意されているため、従業員の労働時間の把握に注意が必要です。深夜帯の勤務がある場合、その勤務時間に応じた深夜割増賃金の計算をする必要があります。また、各条件に合致する従業員は社会保険の加入対象となるため、別途加入手続きも行わなければなりません。

 労務管理は企業に属し、働いている従業員の権利を守り、企業としての信頼性を高める大切な業務であるということを理解しましょう!

 

 

 

働き方改革アルバイトの労務管理はこう変わる


 

  『働き方改革による法改正』により、有給休暇の取得義務の追加や、時間外労働の上限規制などが新たに盛り込まれました。アルバイトやパートなどの短時間労働者や派遣社員に関する規定も多くなり、実際に改正された内容を実現するために労務管理を「見直す」ことが求められています。

ここ働き方改革で変化するアルバイトの労務管理について、注意点や対策をご紹介します。

 

 

年次有給休暇取得の義務化

 労働基準法第39条では、使用者は「労働者に年次有給休暇を付与すること」が義務づけられています。期間としては半年以上継続して仕事に従事しており、すべての労働日の「8割以上を出勤」している場合みおいては、労働者に有給休暇を付与しなければならないと記載されてます。

ただし、有給休暇の取得率は低く、厚生労働省の調査によると、平成30年の時点で労働者一人あたりの取得率は「52.4%」という結果がでています。つまり労働者は、実際に権利があっても与えられた有給の半分程度しか取得できていないというのが現状です。

これらの調査の結果を踏まえ、「有給を使わせてもらえない」「使えるタイミングがなく残ったまま」という労働者の置かれた現状を変えるべく、今回の法改正で「使用者は、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての労働者に対し、毎年5日、年次有給休暇を確実に取得させること」が義務づけられました。

 さらに5日の有給取得を確実に実施するため、使用者側には「時季変更権」与えられることになりました。また、使用者が有給休暇を取得させられなければ罰金が科せられますので注意が必要です。

 

時季変更権とは

労働基準法第39条5項で定められており、「有給休暇の消化によって業務に影響が出る場合には、使用者は労働者の取得時季を変更することができる」というものです。この変更権とは有給休暇を否定 できるものではないため注意が必要です。あくまでも「業務に影響が出る場合」においての「取得タイミングを変更してもらう」ことが目的です。

 

罰則

会社には、取得させる義務のある労働者に年5日の有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金に処せられます。罰則は、「労働者ごと」に成立すると考えられるため、理屈上、5日間の有給休 暇を取得させなかった対象者が複数人いた場合は「複数人×30万円以下」の罰金まで科される可能性があるため注意しましょう。

 

 

アルバイトスタッフも有給休暇取得の対象に

 「働き方改革による法改正」により有給休暇の付与条件も変更され、これまで対象でなかった短時間のアルバイトも有給休暇の付与対象になりました。週に1日のアルバイトも、条件を満たせば有給が付与されるため、従業員のリフレッシュやモチベーションアップにもつながることが期待できると言われています。

 

 

同一労働・同一賃金とは?

  同一労働・同一賃金も大きく盛り込まれた施策の一つです。同一労働・同一賃金とは同じ内容の仕事であれば雇用形態に関わらず、同じ賃金が支払われなくてはならないという概念のことです。


 働き方改革では、同一労働・同一賃金を進めるために大企業では2020年4月から、中小企業では2021年4月から、正社員(無期雇用フルタイム労働者)とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で基本給や賞与、福利厚生などの待遇について待遇差を設けることが禁止されるようになっています。

 

正社員と同じ待遇を得られることで、パートタイム労働者などの非正社員は、給与額や福利厚生サービスなどが大きく向上するといえます。また、キャリアアップを求める非正社員の活躍の場を増やすこともできるため労働者側からすると働く環境が変わります。

非正社員は正社員との待遇差がある場合は、事業主に「説明」を求めることができるようになりました。このため非正社員から待遇差についての説明を求められた場合に根拠のある説明ができるよう、企業側・雇用主は説明できるように準備しておきましょう。

 

 

労働時間や労働日数を管理する目的


 

 先述したような「待遇面の変更」や「新たな法改正」によって企業側・雇用者側は「どのような条件を満たしていれば対象者となり得るのか」ということを細かく確認と把握をしておく必要があります。それらによって適用すべき内容が変わるため管理を正確に行うようにしましょう。

 

 

雇用保険への加入

 労働者が勤務開始日から31日間以上働く見込みがある、1週間の所定労働時間が20時間以上の場合、「雇用保険」に加入しなければなりません。また、31日未満で雇い止めすることが明示されておらず、契約を更新する場合があるときは、31日以上働く見込みがあるとして雇用保険に加入します。

 

雇用保険 加入条件
 
※厚生労働省:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!

 

社会保険への加入

  雇用保険以外の社会保険には、年金・健康保険・労災保険があります。一般的には、アルバイトやパートも正社員の4分の3以上の労働時間であれば社会保険に加入しなければならないと決まっています。

 また、従業員数の多い一部の企業では週20時間以上の労働時間契約かつ、年収106万円以上に該当する従業員も社会保険の加入対象になりますので確認をしておきましょう。

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※日本年金機構:適用事業所と被保険者

 

有給休暇の付与

 忘れてはならないのが従業員の休日です。半年以上勤務している職場で、契約時に定めた所定労働日の8割以上出勤している場合、パートやアルバイトでも採用から6ヶ月経った時点で有給休暇が付与されます。有給付与対象者かどうか管理をしておきましょう。

 

雇用契約書は作成しましょう

 雇用契約書とは、雇用主と使用者との間で労働条件を明確にするために交わす契約書です。労働基準法第15条により、使用者が労働者を採用するときは、賃金、労働時間その他の労働条件を書面などで明示しなければなりません。。

雇用契約が単なる口約束ではなく、雇用契約書を作成することで、労働者側も安心して働けます。雇用契約書自体は義務ではないため、小規模経営の企業や店舗では作成しない場合もあります。

関連記事 > アルバイト採用の基本!雇用契約書・労働条件通知書って?

関連記事 > 知らないとマズい!アルバイトを採用するときに必要な3つの書類

 



【書面の交付による明示事項】

 1.労働契約の期間

 2.就業の場所・従事する業務の内容

 3.始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

 4.賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項

 5.退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 



【口頭の明示でもよい事項】

 1,昇給に関する事項

 2.退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期 に関する事項

 3.臨時に支払われる賃金・賞与など に関する事項

 4.労働者に負担させる食費・作業用 品その他に関する事項

 5.安全衛生に関する事項

 6.職業訓練に関する事項

 7.災害補償、業務外の傷病扶助に関 する事項

 8.表彰、制裁に関する事項 9.休職に関する事項

 

 

 

まとめ:アルバイトの労務管理のポイント


 

 いかがでしたでしょうか。ポイントとしては、

 

 1. 雇用条件を明確に把握すること

 2.労働時間や労働日数を管理すること

 

の大きく2点を押さえておくことが重要でした。

 

法改正による働き方の充実は既存スタッフの負担の軽減やサービス品質の向上やモチベーションの向上など企業・店舗にとってプラスに働く可能性を高く秘めています。パート・アルバイトの長期定着を目指し、アルバイト・パート管理における労務コンプライアンスを踏まえた適切な対応と管理を行っていきましょう。是非参考にしてみてくださいね。

シフト管理のトラブル防止

 

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