必見!テイクアウトを始めたい飲食店が抑えるポイント!

 執筆: Sync Up  更新 2023/06/09 17:49:22

 今回は飲食店の中でも、近年増加傾向にある “テイクアウト” についてのお話です。時間がない中でも気軽に立ち寄れる利便性、お店の味がリーズナブルに楽しめる点から人気が出ています。
実際のテイクアウトのメリット・デメリットから、飲食店がテイクアウトを始める際に必要な営業許可や準備について。そして一番気になる食中毒の危険性について。テイクアウトを始める前に覚えておきたいポイントをまとめましたので、検討している方の参考になれば幸いです。

 

なぜいま「テイクアウト」なのか?


 

中食産業の市場規模は10兆円台へ拡大

 テイクアウトとは持ち帰りという意味で、「中食」と呼ばれる分野です。外食は外で食べる食事、内食は自宅で調理して食べる食事、中食は買ってきて食べる食事です。デパートの惣菜売り場などが中食の代表です。外食は苦戦傾向にある一方、中食の市場は拡大傾向にあります。一般社団法人日本惣菜協会の「2018年度惣菜白書」の調べによれば、2017年の惣菜の市場規模は10兆円の大台を突破。中食産業は、毎年成長を続けています。

 また、2020年4月に株式会社シンクロ・フードが飲食店.COM会員514名を対象に実施したアンケート調査で、51.4%の店舗がテイクアウト営業をおこなっており、約30%の店舗が検討中と回答していました。

 

 約80%もの店舗がテイクアウトを実施中、もしくは前向きに検討している状況です。

 

テイクアウト実態調査

 

 

 

要因は単身者と共働きの増加・軽減税率も追い風に

 晩婚化による単身者の増加や、共働きが増えているという背景があります。さらに、テイクアウトは、店内でゆっくり食事をする時間がない人や、小さな子ども連れのファミリー層から、家で食事を作る時間がない人にも支持されていますよね。最近では、テイクアウト商品は軽減税率の対象にもなっているため、利用する人にとっても嬉しいサービスです。

 

 

席数の限界を超えて売上アップが狙える!

 飲食店の立場からみると、店内が満席でもテイクアウトがあることで売上アップに繋がります。また、店内で飲食をした人がお土産として持ち帰るケースもあるため、メリットが多い営業形態と言えます。

月商におけるテイクアウト売上は、多くの店舗において約10%ほど。事前注文によって食品ロスが防げることやアイドルタイムの売上につながるなどの魅力を感じている飲食店が多いようです。コーヒーショップやファーストフード店、ファミリーレストランなどのチェーン店でも積極的に取り入れられているあたり、需要の高まりが感じられますよね。

 種類も様々で、飲食店がランチタイムに合わせて販売するケース、移動販売の車で商品を販売するケースなど、お店の形態に合わせた営業が可能です。これから飲食店を開業する場合には、外食だけでなく、テイクアウトを視野に入れた計画を立てることも、オススメの選択肢と言えるでしょう。

 

 

テイクアウトを始めるときの手続き


 

 では実際にテイクアウトを始める際の手続きにはどのようなものがあるのでしょうか。保健所への申請や飲食店営業許可でできること、できないことをご説明します。

 

 

扱う商品によって必要な営業許可が異なる

 飲食店をはじめるには飲食店営業許可が必要ですが、テイクアウトを実施する場合、扱う商品によっては、さらに別で許可をとる必要が出てきます。例えば、パンやケーキなら菓子製造業、ハムやベーコンなどは食肉製品製造業の営業許可が必要です。

 届け出に関する細かい規定は各自治体の保健所で異なるので、店舗がある地域を管轄する保健所に確認しなければなりません。また、キッチンカーなどで販売を行う場合には、販売する地域毎に営業許可が必要となる場合があります。迷う場合は、最寄りの保健所に相談してみましょう。ここでは一般的に必要な営業許可についてみていきましょう。

 

飲食店営業許可で変更せずにできること

・ご飯がついていない惣菜(おかず)は、飲食店営業許可でテイクアウト可能
・デリバリーであればご飯がついている弁当でも、飲食店営業許可でテイクアウト可能
・お客さんがタッパーなどを持ってきて、詰め替えて持ち帰ることも可能

 

飲食店営業許可ではできないこと

・ご飯がついている惣菜(おかず)のテイクアウトは仕出しの営業許可が必要
・オムライスなど米を使った料理のテイクアウトも仕出しの営業許可が必要
・置き弁(作り置き弁当の販売)は仕出しの営業許可が必要
※飲食店営業許可でテイクアウト営業する場合は、その場で作りましょう。その方がロスもリスクも減ります。

仕出しの営業許可を取るために必要なことは?

・仕出しの営業許可をもらうには、厨房が客席エリアと離れていること
・壁で仕切られており、ドア(上から下まできちんとしたドア)があること
・仕出しの営業許可に変更する場合は、保健所にて営業内容の変更申請
 - 変更申請なので手数料はかからない
・営業許可内容を仕出しに変更しても、イートインはそのまま可能
 - テイクアウトができてイートインスペースがある飲食店として営業できる

 

ドリンクのテイクアウトも要注意

・お酒を販売する場合、酒類販売業免許が必要と酒税法で定められている
・飲食スペースとは別に専用の販売スペースを設ける必要がある
 - 大掛かりな内装工事が必要になる場合もある
そのため、すでに経営している飲食店で店内の飲食と並行しテイクアウトをスタートさせる場合、飲料はソフトドリンクに絞るのがオススメです!

 

衛生管理のルールを守って販売しましょう

  食品に衛生管理等の基準が年々厳しくなっています。特に、期限表示などについてはしっかりとルールを守る必要があります。

原則として、その場で調理したものを対面で販売する場合には、賞味期限やアレルギー表示は義務付けられていませんが、お弁当やお惣菜など持ち帰ってから食べる物に関しては、賞味期限やアレルギー表示をしておいたほうが安心です。

 

自社で製造した商品であっても、容器に包装した状態で販売する場合には、

 商品の名称・アレルギー表示・添加物表示・期限表示・保存表示・製造者

の表記が必要になります。

 

 

 

テイクアウトのメリット


テイクアウトは少人数で運営できる

 最悪1人で営業することも可能です。ホールサービスにはある程度の人数が必要ですが、テイクアウトのオペレーションを工夫することで、人員を一人配置しておけば営業することが可能となります。人件費が抑えて売上アップを狙える点がテイクアウトの大きなメリットです。

 

省スペースで営業が可能

 飲食店をオープンする場合には、物件取得費の負担が大きくなります。また、店舗のスペースが広ければそれだけ家賃や光熱費もかかります。しかし、テイクアウト営業であれば、現在の店内のスペースを有効活用することで営業することができます。

 

店内に比べ、客数の限界がない

 店内の場合、客席の数が上限です。そこから先は席の回転数によって売上が変動します。しかし、テイクアウトの場合には客席がないので、売るものがある間はずっと売り続けることができます。もちろん、提供に時間がかかってしまえば、そこまで多く売り続けることは出来ませんが、満席になったからお客様を逃すということは避けられます。また、テイクアウトのリピーターを増やすことで大幅の売上アップも狙えます。

 

 

テイクアウトのデメリット


立地選定が重要

 よほどの人気店でない限り、需要のある場所に出店しなければテイクアウトは長続きさせることが難しいです。競合はスーパーやコンビニなど身近なところにたくさん存在しています。スーパーやコンビニより美味しい料理を提供していると思いますが、利便性が悪いと利用頻度が大幅に低下してしまいます。

 

単価が低い

 テイクアウトの価格帯の平均が決まっています。スナック系であれば300円~500円。お弁当などの場合は500円~800円程度。価格帯は立地によっても異なりますが、地域に合わせた手頃な価格帯が妥当です。

 

容器など準備物が必要

 使い捨て容器などの備品を準備する必要があります。容器にもこだわってオシャレにしたい!と思えば、容器代でもそれなりの費用が発生します。消耗品にかかる費用が高くなるという点と、かさばる備品を収納しておくスペースが必要という点がデメリットと言えます。

 

 

テイクアウト用の場所の確保を!


 

 まずは場所の確保からです。すでに飲食店を経営している場合、店内の客席や作業動線の邪魔にならないように注意しながら、テイクアウト用のスペースを確保したいところです。テイクアウト用のスペースの作り方のポイントをご紹介します。

 

注文&ウェイティングスペースを作る

 多くの飲食店の場合、席会計を導入し、客席を広く設計しているため、レジ付近に広いスペースは設けていないことが多いです。しかしテイクアウトを始めるのであれば、レジ付近で注文を受けたり、商品が出来上がるまで待機するスペースが必要となります。混雑を避けるためにレジカウンターの場所を変えてスペースを作ったり、椅子を配置して座って待てるようしましょう。

 

ショーケースを設置する

 デパ地下の総菜売り場のように、ショーケースにテイクアウト用の商品を並べるのもおすすめです。彩りの良いサラダや惣菜などは、並べているだけでも美しく興味を引きます。レジ横などに設置することで、店内利用のお客様への周知効果もあります。

 

テイクアウト ショーケース

 

 

収納式の棚や机を作り、テイクアウト専用スペースとして活用

 テイクアウト用商品を陳列するための棚や机を用意しましょう。しかし、そのためだけに専用の広いスペースを確保すると店内が狭くなり、作業の邪魔になることもあります。その場合におすすめなのが、壁に取り付けるタイプの折り畳み式の棚です。需要の高いランチタイムや帰宅時間など必要なときだけ棚として活用し、それ以外は収納しておけば邪魔になりません。

 

 

準備ができたら近隣住民や通行人へ告知


看板やのぼりで宣伝しよう

 お客様に提供できる商品の準備ができたら、それをお客様に知っていただきましょう。テイクアウト専門店であれば、はじめから道路に面するように作ることもできますが、すでにある飲食店の場合は店内でテイクアウト販売を行うことになるでしょう。

しかし、店内のみの販売では通行人に周知させるのは難しいです。そこで、テイクアウトを始めたことを知ってもらえる工夫が必要です。

SNSでお知らせするのはもちろんですが、人通りが多い場所では店先にテイクアウトを始めた旨を書いた看板やのぼりを出して知らせる方法も有効です。

ポスターを作るには難しい技術が必要だと考えていても仕方がないので、手書きの黒板をイーゼルで立てて置くなどでも構いません。とにかく店舗の外にお知らせをして、認知をしてもらうことが重要です。また、のぼりは既製品でも十分に目立ちますし価格も手頃なため導入しやすいです。また、レジにテイクアウト用メニューをプリントアウトして、持ち帰ってもらうのも良いでしょう。
内装を少し変えるだけでも、利用のしやすさが大きく変わります。

 

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ポスティング(チラシを撒く)

 意外と効果的なのが、チラシです。いまどきチラシ?と思われがちですが、日常消費領域は購入頻度が高いため近所へのチラシ配布の効果が未だに根強いです。


例えば、住宅のチラシは引っ越しをする頻度は少ないため、撒けば撒くほど効果が薄くなります。しかし、食事は毎日行うため、目につけば来店してもらえる可能性が高くなります。その証拠に、未だにピザ屋のデリバリーのチラシは、ポストに頻繁に入ってることが多いです。

 

 

食中毒には要注意!


一番大きなリスクは、食中毒による “信用” の低下 

 テイクアウトのリスク管理は自己責任になります。特に「食中毒」に関するリスクが今までより高くなるという自覚を持ってください。

もし食中毒が出てしまった場合、賠償問題や営業停止などのリスクがあります。また一番大きなリスクは「信用」を失うということです。長年作り上げてきた「信用」は「食中毒」を出すことで一瞬で失います。そうなると営業停止後に再開してもお客様はなかなか来てくれなくなります。

 

リスク管理のポイントは、事故が起こる確率を下げること

 イートインの場合、衛生管理もしっかりなされたベストな状態で、お客さまにおいしい料理を提供することができます。その点、テイクアウトの場合はどうでしょう。

たとえ、お店でお客様に提供した状態では安全だったものでも、お客さまの手に渡ったあとに、食中毒が発生してしまうことも充分に考えられます。食中毒を出さないように普段から努力していると思いますが、どんなに気を付けていても事故は起こります。その事故が起こる確率を下げる努力をおこないましょう。

 

保管方法・消費期限を明確にする

 すぐ食べてもらえることを想定しても、実際にお客様がいつ食べてくれるのか定かではありません。長時間放置されてしまう可能性もあります。商品を渡す際には必ず「いつまでに食べるべきか」「保存方法」をはっきりと伝えておくことが重要です。口頭だけでは忘れてしまうので、必ず容器に記載するか、シールを貼るなど、お客様が後から目で確認できる方法が望ましいです。

 

ウエットティッシュを一緒に渡す

 テイクアウトであれば、手洗い場のない屋外などで口にすることもあります。こういった場合、商品に問題がなくても、外から雑菌が入り込んで食中毒を引き起こすこともあります。清潔な状態でお客さまが食事を楽しめるように、アルコール除菌ができるウエットティッシュをつけておくのがオススメです。食中毒予防だけでなくサービス面でも喜んでもらえるメリットがあります。

 

持ち運び時間に合わせた保冷材をつける

 テイクアウト品の中には冷蔵保存が必須なものがあります。持ち運びに時間が掛かる場合は特に注意が必要です。要冷蔵商品を提供する際には、必ずお客さまに持ち運び時間をヒアリングするようにしてください。その後、時間にあわせた保冷剤をつけて傷みにくい状態で提供しましょう。

 

容器を工夫する

 保冷剤を付ける以外に、容器自体を工夫する方法もあります。保冷や断熱効果が高い素材を使用した容器がオススメです。ただしコスト面割高になりますので、予算を踏まえた上で導入可すべきか検討しましょう。

 

季節に応じて商品をかえる

 特に梅雨から夏にかけて食中毒が起こりやすい季節になります。商品にもよりますが、そういった時期はテイクアウトを中止したり、提供する食材を変えるなどの対応を行いましょう。すべてを中止してしまうと売上にも影響が出ますので、その季節限定のメニューを用意しておくことがオススメです。お店のこだわりを大切にしつつ、傷みにくい食材を選ぶのがポイントです。

 

他にも


・マスクとビニール手袋を装着
・まな板や作業台、包丁などの調理器具の除菌を徹底
・異物混入しないための努力。クリップ、ラップの切れ端、食品の入っていた袋
・事前に賠償責任保険(飲食物)への加入(事故が起こる前に加入しておく)

 

といった点にも注意して準備を進めましょう。

 

 

上手くテイクアウト営業する上でのポイント


お客様にストレスなく購入してもらう

 テイクアウト営業では、食中毒対策以外にも大事になってくるポイントがいくつかあります。売上を伸ばすだけではなく、「リピート客」を作ることが目的となりますので、出来る限りお客様にストレスなく購入してもらうことが重要と言えるでしょう。

 

料理の液漏れは満足度低下に繋がるので注意が必要!

 家が近い人の場合は簡易包装で対応可能ですが、全員がそうとは限りません。家までの帰宅中にこぼす等の問題も考えられます。ですので、商品によってはお客様に帰宅距離のヒアリングをして、容器の梱包を厳重にするなどの対応をすると良いでしょう。

 

また出来るだけ液体の料理を避けることも検討しましょう。リピーターを増やすためにも、出来る限りのお客様にストレスを与えない配慮が重要です。ウーバーイーツでは、容器をラップで何重にも巻いたり、配達員の評価制度を導入しています。そうすることで配達員自身が商品への気配りを忘れないように工夫しています。

 

複雑な盛り付けは崩れて汚くなる

 盛り付けに拘り過ぎても崩れる可能性があります。開けた瞬間に崩れた料理を見て、がっかりするよりは崩れづらいシンプルな見た目にして、中身にこだわるほうが賢明と言えます。

 

 

まとめ リスク対策を行えば、お店の協力な武器になる!


 

 単身者や共働きの増加など、人々のライフスタイルの変化によって、テイクアウト含む中食産業は今後も伸びしろが大きい市場と言えます。

また、テイクアウト営業は小さなスペースと、少ない人数でスタートできるという点から比較的導入しやすい業態と言えるでしょう。しかし、競合が近所のスーパーやコンビニとなるため、売れ筋商品の開発や告知方法の工夫をしなければ、中々売上を伸ばすことができないのも事実です。また、お店の信頼に関わる食中毒のリスク対策もしっかり行わなくてはいけません。

テイクアウト参入における課題は様々ありますが、席数の制限を超えて売上を上げることができる点において、とても魅力的です。時間は掛かりますが多くのリピーターを獲得することで、安定的に売上を上げていくことができる業態であるため、検討してみるのも一つの手ではないでしょうか?

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