罰金もある!?改正健康増進法による飲食店の喫煙室対策について

 執筆: Sync Up  更新 2023/06/09 17:48:29

2020年4月1日から改正健康増進法が全面施行となり、飲食店は “原則禁煙” になりました。ルールを違反すると罰金も存在するため要注意です。

経過措置として小規模店では喫煙可能なケースもあったり、また一方では、自治体による独自の条例もスタートしたりと、「ルールがわかりにくい!」と思っている経営者や店長も多いのではないでしょうか。

 

「うっかり違反していた!」とならないためにも、今回義務化されたポイントをできる限りわかりやすく解説していこうと思います。

 

下記文章には主に、「喫煙室」「喫煙可能室」「喫煙専用室」という3つの似た言葉が出てきます。後ほど詳細については説明しますが、とても分かりづらく混同しやすいため、先にカンタンに解説します。


 #喫煙可能室: 飲食しながら喫煙が可能な部屋。 いわゆる、喫煙席のこと(全席喫煙可も含む)

 #喫煙専用室: 喫煙のみが許された部屋。 いわゆる、喫煙所のこと。

 #喫煙室: 上記2つの総称

 

※本記事は執筆時点での最新情報を正確に記載することを心掛けましたが、 変更が生じている可能性があります。 念の為、厚生労働省の情報を確認していただくよう、お願いいたします。

なくそう!望まない受動喫煙:https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/

 

再チェック ”改正健康増進法”って?


 改正健康増進法とは、受動喫煙による健康被害を防止するために、一般人が利用する施設での喫煙を原則禁止にするとともに、施設管理者が行うべき措置を定めた法律のことです。

2018年7月の成立後から段階的に施行され、児童福祉施設・病院・診療所・行政機関庁舎の敷地内から原則禁煙となり、2020年4月1日から、一般施設の屋内が原則禁煙となりました。これにより、居酒屋やカフェなど、飲食と一緒にたばこを楽しむ飲食店では客離れが懸念されています。

しかし、施設内に喫煙室を設置すれば、喫煙室内での喫煙は可能です。飲食店においても、「喫煙専用室」を設置し、国から指定された標識を提示することで喫煙が可能となります。また、2020年4月1日時点で営業している小規模飲食店(既存特定飲食提供施設)は例外となり、喫煙可能な場所であることを標識で掲示すれば店内での喫煙が続けられるようになっています。国が定める「既存特定飲食提供施設」は、下記の条件になります。



 #
国が定める「既存特定飲食提供施設」の条件

  1. 2020年4月1日より前に営業している

  2. 資本金が5,000万円以下

  3. 客席面積が100㎡以下

  上記すべてに該当する施設 ※経過措置

 

 

自治体によって独自の条例が存在


 

 国の動きに合わせて、東京都を含む複数の自治体では独自の受動喫煙防止条例を制定している。中には改正健康増進法より厳しい規制が盛り込まれているケースもあるため注意が必要です。

 

東京都受動喫煙防止条例

 東京都の受動喫煙防止条例では、飲食中に喫煙ができる「喫煙可能室」の設置が認められている「既存特定飲食提供施設」の条件が国よりも厳しくなっています。それでは条件を見ていきましょう。



 #国が定める「既存特定飲食提供施設」の条件

  1. 2020年4月1日より前に営業している

  2. 資本金が5,000万円以下

  3. 客席面積が100㎡以下

  上記すべてに該当する施設 ※経過措置

 


 #東京都が定める「既存特定飲食提供施設」の条件

  上記の国の定める条件にプラスして

  4.従業員を雇っていないこと ※経過措置



上記より、東京都の飲食店のおよそ84%が対象となっています。つまり、東京都のほとんどの飲食店では、飲食中に喫煙ができる「喫煙可能室」の設置が認められないことになります。しかし、飲食の提供ができない「喫煙専用室」の設置は認められています。

※東京都の条例が指す「従業員」に同居親族や家事使用人は含まれません。例えば、経営者がご主人で奥さんが手伝っている場合は「従業員はいない」とみなされ、飲食中に喫煙ができる「喫煙可能室」の設置が認められます。

 

大阪府受動喫煙防止条例

 大阪府の受動喫煙防止条例も、東京都と同様に「喫煙可能室」の設置が認められる「既存特定飲食提供施設」の条件に特徴があります。それでは見ていきましょう。

 #国が定める「既存特定飲食提供施設」の条件

  1. 2020年4月1日より前に営業している

  2. 資本金が5,000万円以下

  3. 客席面積が100㎡以下

  上記すべてに該当する施設 ※経過措置

 


 #大阪府が定める「既存特定飲食提供施設」の条件

  1. 2020年4月1日より前に営業している

  2. 資本金が5,000万円以下

  3. 客席面積が30㎡以下(2025年4月施⾏)

  上記すべてに該当する施設

 

大阪府では、2025年4月より、客席面積が30m2を超える飲食店は、「喫煙専用室」以外での喫煙が禁止されます。たばこを吸いながら飲食ができる「喫煙可能室」の設置は認められません。また、2022年4月から「従業員を雇⽤する飲⾷店は、客席⾯積にかかわらず原則として屋内禁煙に努める」という努力義務が課せられます。

 

 

飲食店が注意したいポイント


 

 2020年4月1日時点で営業しており、客席面積が100以下、かつ資本金5000万円以下の小規模店は、自治体による個別規制がない限り、店内での喫煙が可能となります。

しかし、喫煙可にする場合にもルールがあり、たとえ「知らなかった」であっても違反すると最大50万円の罰金になりますので注意が必要です。それでは、次に喫煙可にする際のルールについて見ていきましょう。

 

店頭に標識を掲示する

 店頭や入口などの見えやすい場所に “喫煙可能店” “20歳未満は立ち入り禁止” といった標識を掲示する。紛らわしい標識や汚れた標識は禁止されているため、罰則の対象となり得ます。

 

20歳未満立ち入り禁止

 店内を喫煙可能にした場合、20歳未満は立ち入り禁止となる。これは客だけでなく、従業員にも適用されるため、20歳に満たない従業員を雇うことはできなくなります。

 

喫煙専用室の出入り口に標識を掲示する

 「喫煙専用室」を設置した場合、喫煙できる場所の出入口と主な出入口の見やすい場所にその旨を表示する必要があります。

 

保健所に届出をする

 喫煙可能店は、管轄の保健所へ届出書を提出しなければならない。また途中で「禁煙店」に変更するときにも変更届出が必要となります。

 

「喫煙室」の種類は4つ ※2020年5月現在


 

喫煙専用室:一般的な事業者が対象

 #施設の一部に設置するタイプ

  〇紙たばこの喫煙が可能

  〇加熱式たばこの喫煙が可能

  ×飲食物の提供が不可

 

 

加熱式たばこ専用喫煙室:一般的な事業者が対象

 #施設の一部に設置するタイプ

  ×紙たばこの喫煙が可能

  〇加熱式たばこの喫煙が可能

 

喫煙可能室:既存特定飲食提供施設のみが対象

 #施設全体 or 一部に設置するタイプ

  〇紙たばこの喫煙が可能

  〇加熱式たばこの喫煙が可能

  〇飲食物の提供が不可

 

 

喫煙目的室:特定事業目的施設のみが対象

 #施設全体 or 一部に設置するタイプ

  〇紙たばこの喫煙が可能

  〇加熱式たばこの喫煙が可能

  〇飲食物の提供が不可

 

 

標識の掲示について


 

 改正健康増進法では、喫煙可能施設に対して、どのような喫煙設備を設置しているか?説明する標識の掲示が定められています。それでは、飲食店に必要な標識を見ていきましょう。

 

自店舗に必要な標識は、こちらからダウンロード可能です。

16種類の「標識」印刷用データを一括ダウンロード:https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/sign/

 

喫煙専用室に関する標識

施設の入り口等に掲示され、当該施設の一部に喫煙専用室を備えていることを示すもの

 

sign01-1

 

施設内の喫煙室に掲示され、喫煙室のタイプが喫煙専用室であることを示すもの

sign02-1

 

 

加熱式たばこ専用喫煙室に関する標識

施設の入り口等に掲示され、当該施設の一部に指定たばこ専用喫煙室を備えていることを示すもの

sign03-1

 

施設内の喫煙室に掲示され、喫煙室のタイプが指定たばこ専用喫煙室であることを示すもの

sign04-1

 

喫煙目的室に関する標識

施設の一部に喫煙室がある場合

施設の入り口等に掲示され、当該施設の一部に喫煙目的室を備えていることを示すもの

sign05-1

 

施設内の喫煙室に掲示され、喫煙室のタイプが喫煙目的室であることを示すもの

sign06-1

 

施設全体が喫煙室である場合

施設の入り口等に掲示され、当該施設全体が喫煙目的室となっていることを示すもの

sign07-1

 

喫煙可能室に関する標識

施設の一部に喫煙室がある場合
施設の入り口等に掲示され、当該施設の一部に喫煙可能室を備えていることを示すもの

sign12-1

 

施設内の喫煙室に掲示され、喫煙室のタイプが喫煙可能室であることを示すもの

sign13-1

 

施設全体が喫煙室である場合

施設の入り口等に掲示され、当該施設全体が喫煙可能室となっていることを示すもの

sign14-1

 

 

改正健康増進法って?飲食店の喫煙・禁煙 まとめ


 

 店舗規模や自治体によっても対応が異なる「改正健康増進法」。とてもややこしい法律ではありますが、ルールを破ると最大50万円の罰金になってしまう可能性もあります。この機会に一度、自店舗の規模や所属する自治体のルールをきちんと把握することから始めてみてはいかがでしょうか。

 また、飲食店の受動喫煙対策については、どうしても客離れに議論が集中しがちです。しかし、本来目指すべきは喫煙者・非喫煙者に関わらず、利用客にとって最も喜ばれるお店づくりです。ルールを守りながら、どちらの顧客満足度も向上させる施策を検討していきましょう。

 

人気の記事

新規CTA